アジ三昧
大アジを大釣りして、尺八同好会の合宿稽古打ち上げの肴にした。尺八も釣りと同様、私の趣味の一つ。自分でいうのもおかしいが結構上手である。合宿場所は六甲山裏の無動寺という山寺。琴・三弦（三味線）の先生方をお招きして，一泊二日の強化合宿。しっかり稽古して来春には演奏会を開く。
稽古後の宴会でアジの酢づけを仲間にふるまった。もちろん前日の釣果。宴席片隅に臨時の板場を設け、用意のタッパから次々に酢づけを取り出して皮を引き刺し身に造る。バラン・青シソ・レモン・ネギ・土ショウガなどを添える。釣り自慢をしつつ大皿数枚に盛りつけて席へ出すと、ややしばらくのち、席からウオゥ〜という驚嘆の声があがった。 「これ、ごっついうまいやんかぁ 〜」
用意の二十尾はすぐに売り切れた。すべて二十五センチほどのマアジである。アッ！ という間だった。
それにしても昨日の釣りは圧巻だった。入れ食いで釣っていて，ふと気がつくと、私の艇のまわりに多数のギャラリー船が集まっていた。皆さん方、あっけにとられた顔だった。ギャラリー注視の中、私一人が大マアジ約百数十尾の釣果。この間、周りを取り巻くギャラリー船に魚の気配まったくなく、一方我が艇のイケスはアジ黒々で、もう底が見えなかった。ニ連三連と釣れ盛る中、もうこのあたりでと竿を納めたが、期せずして華々しい釣技を世間様に披露することになり、釣り師の面目これにすぎるはない。
◇ ◇ ◇
毎朝毎晩アジをたべているから私はすこぶる元気である。だが、かみさんがアジの食い過ぎでダウンした。
犬を大小ニ匹飼っているが、小さい方のシーズー犬ゲェ助は魚好きでご機嫌。大きい方のボルゾイ犬花子は肉党なのでかみさん同様ダウン。ことに花子の場合はアジあたりしたのか腹具合がとても悪い。数日来下痢が続き青白い顔をしている。親の私から言うのもおかしいが、彼女はすこぶるつきの別嬪である。それが品よく悩ましげな目つきで私を見て「クゥ〜ン」と便意を告げる。そのつど横になっていた私はガバッとはね起きて花を連れ、部屋外へトイレに走り出る。三日前から花子介護のため夜は八畳の間で花と一緒に寝ているが、夜中にニ〜三度クゥ〜ンで起こされる。
昨晩もかみさんが、「今晩も花と一緒に寝てやってね」というから花と寝た。花がゴソッと動くと反射的に目が覚める。側にシーズー犬ゲェ助も寝ていてこれが大イビキをかくが、不思議とゲェのイビキの方は気にならない。今朝起きた時かみさんに、「ゲェ助はこの頃イビキをかかんようになったな」というと、かみさんが、「なに言うてんの、昨晩もゲェーゲェー大イビキしとったやないの」という。
「パパは私がニ階から様子見に下りたのも知らんの？」という。
私には花のクゥ〜ンとゴソッの他は何も聞こえなかった。どうりで夜中に幾度も飛び起きたわりに、私はぜんぜん眠くない。